2010年11月15日月曜日

A.「治験」と「臨床試験」が違っていることの是非 の細論点

  この件については、いま医療界でも議論が進んでいる話ですし、専門でもない個人の話ですので不正確なところもあるかもしれません。とりあえず、朝日新聞が主張している部分について、まず整理し、細論点を考えたいと思います。特に「治験」と「臨床試験」の違いに関する議論が行われているのは、以下の記事です。
  • 記事 1.
    (医を創る)臨床研究、新薬承認に壁 大学などの研究者、データを申請に使えず https://aspara.asahi.com/blog/mediblog/entry/UK1giYMjBO
  • 記事 2. 【オピニオン】 臨床試験を考える 〜 福島雅典・臨床研究情報センター長インタビュー 〜 http://www.asahi.com/health/feature/opinion101110_interview.html
  • 記事 3. 【オピニオン】 臨床試験を考える 被験者保護する仕組み必要 http://www.asahi.com/health/feature/opinion101110_editor.html
上の主な記事をまとめると、とりあえず大きく 2 つ論点があると思います(もしかしたら、他の記事にいれたほうがいい論点があるかもしれません)。
  • A-1. 法律上で縛られていないために重篤な有害事象が問題視されない可能性がある
  • A-2. 「臨床試験」が「治験」と別であると、二度手間になったりして、「治験」および承認が遅れる
  なお、この裏というか「臨床試験」と「治験」が一緒になりにくい理由については、「治験」と一緒にすると「臨床試験」でやっていた試験の作業がかなり増えるということがあります。その分質は上がる、かもしれません。さらに加えると、新薬の「治験」と「臨床試験」に関する議論と、承認済みの薬の「臨床試験」とでは状況が違うので、A-1、A-2 それぞれにおいて異なった議論が必要でもあります。
  この 2 つのことだけ?分ける必要あるの?と思うかも知れませんが、これは結構種類が違います。1 つめは安全性の話で厚生労働省-PMDAっぽい話ですが、もう 1 つは経済産業省っぽい(というと微妙ですが)開発の話が多分に含まれています。この論点 2 つをごっちゃにして記事を書かれると本当に分かりにくいので真面目になんとかしてほしいです。分けて議論しないと、課題解決に結びつかないと思います...。
  そもそも医科研の件は、記事 3 の患者保護の安全性の話 (A-1) が主でしたが、その後に出た、記事 1 は A-2 の話をしていて、今回出た記事 2 は A-1 と A-2 の話がかなり混ざっています。この細論点は完全に可分でない部分もあるかもしれませんが、ある程度分けられる話だと思います。論点を整理して報道してほしいです。なお、整理するとわかりやすいですが、A-2 の例として医科研の話は適切なんでしょうか?
  もし私なら、(A-1) 安全性と (A-2) 新薬が世に出る効率の問題があり、「臨床試験」と「治験」を統一することを考えると、それぞれにつきこういう利点と不利益が存在する、実例として (A-1) には~~、(A-2) には~~のような事例が存在する、って話を進めると思います。センセーショナルにするのではなく、真摯に議論するならば、ですが。こういう形での議論でかつ、適切な実例を挙げていれば多くの「臨床試験」、「治験」関係者は喜んで議論に乗るのではないでしょうか?
  この 「A.「治験」と「臨床試験」が違っていることの是非」について、細論点への分解と、それに対する賛否、各種意見の把握と吟味、および細論点にあう適切な事例の選択ができなかったことは、問題提起や議論をする上での朝日新聞側の失点だと思います。
  以上、A の区分についてはこれぐらいで...。細かな A-1, A-2 と A 全体の議論はまた別に~(ってほんとにできるのかなぁ^^;)


(2010.12.03 微修正)

2010年11月14日日曜日

朝日新聞の医科研の臨床試験の報道問題、論点整理

  • 注:以下の記事はあくまで、専門でない個人で考えた、意見のひとつとして読んでいただけたら幸いです。一応、事実関係と意見は表現的に分けてわかるように書けたらいいなと考えています。

  朝日新聞の医科研の臨床試験の報道の問題について、その問題の全体像をこの記事ではまとめたいと思います。詳しいことは実際の朝日新聞の記事や、その他医科研の主張、オンコセラピーサイエンス社の主張、患者団体の主張などを確認してください。

  この報道全体としては、医薬品の「治験」と「臨床試験」が異なっていて、それが問題ではないかという問題提起をするために行われた、と朝日新聞は述べています。
  その問題提起の題材として、医科研の「臨床試験」が使われ、それにオンコセラピー・サイエンス社がまき込まれ、患者団体としても影響を受けたという構図になっています。またこの問題の取り上げたときに批判した部分が、今行われている「臨床試験」の多くに影響を及ぼし兼ねない内容であったため、「治験」や「臨床試験」に関わる医療従事者も意見を述べているのが現状です。
以上を争われている個別の論点に分解すると、
主論の 2 点、
  • A「治験」と「臨床試験」が違っていることの是非
  • B 上記の争点に関して、医科研の「臨床試験」をあげることが適切か
と、その題材としてあげられた医科研の「臨床試験」が
  • (1) 実際に臨床的に問題になるのか?重要性があるのか?
  • (2) 臨床的に問題があるなら法的責任はあるのか?
  • (3) 問題があるとした論拠に、関係者へのインタビューがあったが、それは事実か?
  • (4) オンコセラピー・サイエンス社が関係あるとされているが、本当に関係があるのか?
  • (5) 中村教授が関係あるとされているが、本当に関係があるのか?
  • (6) 上記の題材としてあげた医科研の「臨床試験」に対する取材について、医科研側の話を聞いており、医学的にも素人目にもその意見は妥当であるにもかかわらず、一連の報道で掲載しないのはなぜか?
  • (7) 医科研の「臨床試験」について、(6) も含め、はじめから結論ありきの報道姿勢ではなかったか? 集めた情報全体を見通して全体像を伝えているか。
  • (8) 混合診療で問題ではないか?(ネットでは公開されていない記事での議論?)
になります。
  他に、あまり関係ない部分で「ナチス・ドイツ」をだしてくるなど、不適切な印象操作をしようとしているのでは?と個人的に思うところもあります。ただここは小さなことなので論点には含めませんでした。
(「ナチス・ドイツ」の件は私以外にも他にも指摘している方がいます。)

  今回の問題は、論点が多くて整理がつかないところと、A の是非の部分の問題が難しいために、分かりにくい問題になっています。特に A、B の大きな話と、下の個別の論点の主従関係が分からないと、理解しにくいです。しかし、上記の議論になっている論点で整理して記事や意見を見てみると、あまり詳しくない方でも、A 以外については議論がよくわかると思います。A についてはさらに細かな論点があるので別に論点をまとめます。


(2010.12.03 フォーマット微修正)