2015年7月22日水曜日

らしんばん秋葉原店の水販売の問い合わせ結果と顛末


らしんばんさんの秋葉原店が、各種表示のない水(本体はいろはすみたい)を販売していて、かなりの批判があった事案がありました。



価格が 500 円と表示されていたこともあり、ツイートをしている店舗のアカウントに批判が殺到していましたが、その twitter アカウントはあくまで配信専用と書いてあり、そうとう不毛なことになりかねなかったので、web フォームの問い合わせ窓口に連絡してみました。

昨日の夕方 (7/21)、回答がきたので以下に掲載します。
このコメントをどう解釈するかはその人次第だとおもいますが、公的機関への大量通報(?)はちょっとやりすぎたのでは…?




すんか 様

この度は貴重なご意見を賜り、誠にありがとうございます。
株式会社らしんばんマネージャー◯◯と申します。

ご指摘の件につきまして、ご不審を抱かせ、またご心配をおかけして申し訳ありません。
弊社といたしましては、話題性を狙った演出でありまして、販売の意図はございませんでした。
実際にお客様への販売は行っていないのですが、店頭で価格表記を行っている以上、販売の意図があるように受け止められるのは当然で、ご指摘にあるとおり、法令に抵触しかねない内容でございました。

本日、弊社秋葉原店に地域を所管されている千代田区保健所の方及び農林水産省の担当の方がご来店され、展開した経緯・状況をご確認いただきました。
誤解の生じないような配慮についてはご指導いただきましたが、問題はないとのご返答をいただいております。

この度の件は社内での認識不足によるものでありお客様のご不審を招いた事、お詫び申し上げます
今後このような事が無いように、法令遵守を徹底してお客様に安心してお買い物できる店舗を目指すよう努めてまいります。

この度は貴重なご意見を賜りましたことお礼申し上げると共に、ご不審を抱かせ、またご心配をおかけしましたこと、改めましてお詫び申し上げます。
誠に申し訳ございませんでした。

--
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株式会社らしんばん

〒170‐0013
東京都豊島区東池袋1‐44‐3 池袋ISPタマビル5階5‐E
web:http://www.lashinbang.com/
e-mail:info@lashinbang.co.jp
営業時間 10:00~18:00 [土日祝定休]
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2011年7月5日火曜日

腸管出血性大腸菌(O157, O104等)の患者数とHUS患者数、死者数の比較



今年(2011年)の 5月から発生していたドイツでの腸管出血性大腸菌 O104 による一連の食中毒ですが、6 月後半になってやっと収束してきました。現在日本ではあまり報道がないですが、学術論文などでは起因菌や感染者数について情報が出てきているようです(NEJM: 21696328, The Lancet)。

この食中毒では、HUS (Hemolytic-uremic syndrome) が多数発生しており、感染者数が多いだけでなく、重篤化する人や亡くなる人が多く、感染者に対する HUS の割合も 3 割程度と高くなっていました。

また、このドイツの O104 の状況を追いかけている際に、食中毒の患者さんの数を比較している記事を見かけ、規模を見るのに患者数は重要だけれど、HUS の患者さんの数や亡くなった方の数についても検討したほうがいいのではないかと思っていました。

そこで、腸管出血性大腸菌(O157, O104等)の患者数とHUS患者数、死者数の比較を、リンク先の記事と、その元資料(Review)をもとにおこなってみました。Review の性質上、O104 の食中毒と今回のドイツの食中毒のみのデータの比較になります。
あまり丁寧には調べていません(中の論文を全部は読んでない)ので、参考程度にご覧ください。
(一番下の 2011年の日本のユッケの件は、数はあまり多くありませんが、参考に載せてみました)

場所 患者数 HUS 患者数 死者数 起因菌 経路 Pubmed 備考
Japan 1995 12680 121 3 O157 radish sprouts(?) 10221032  
Germany 2011 4173
(3222)
892
(810)
49
(39)
O104:H4 sprouts(?) NEJM: 21696328 The Lanect
Canada 2000 2300 27 7 O157:H7 drinking water 12638998  
USA, New York 1999 1000 >11 2 O157:H7 well water 10506035 全文
USA 2000 788 O157:H7 raw beef, cross contamination of other foods    
USA 1992-93 700 (501?) 45 3 O157:H7 hamburger at fast food restaurants 7933395  
Scotland 1996 633 2 0 0157 sewage contamination of drinking water 8885663  
Canada 2001 521 22 2 O157:H7 minced beef and caribou 7747090  
Scotland 1996 512 >22 17 O157:H7 meat from one shop 11467789 全文
Scotland 1996 503 O157:H7 lunch foods - 全文pdf
UK 1997 332 O157:H7 restaurant food 9107072  
USA Kentucky 1999 329 0 O157:H7 beef - 全文
Japan
(参考)
2011 160 31 4 O111:H- raw beef - 数は多くないが参考に

比較してみると、ドイツでの HUS の件数が段違いに多いことがわかります。
この原因としてはいくつか考えられますが、(1) 報告されている患者数が少ない(2) HUS が発生しやすかった、ということが大きく分けて考えられます。

今回の食中毒では、ドイツ内(と EU 内)の広い範囲で発生したため、(1) の中毒症状が出たけれど、患者数に含まれていない患者が他よりもいる、ということも考えられるかもしれません。




ただ、(2) について、前述の論文でどのような年齢層で HUS が発生しているか示したグラフがありますが(下図)、今回は年齢に関係なく HUS が発生しています


以上から考えると、単純に未報告の患者がいたと考えるより、HUSが発生しやすい状況(菌)であった可能性が強いのではないかと思えます。よく読んではいませんが、論文では、各種耐性についても記載されているようです。また最近の報道では、「大腸菌のDNAを調べた結果、2種の交配種であることが判明。うち1種が人間などの腸内に付着しやすい性質を持っており、大腸菌の毒素の体内吸収を速めたとみられる。」(2種交配し毒性強まる 欧州大腸菌で英チーム発表 共同通信)との報道もあります。

7 月初めの現時点で、まだ完全には収まっておらず、スプラウトの先の感染源(種など)の特定も行われているようです(Nearly 4,180 Sickened in E. coli O104:H4 Outbreak)。規模や菌のようすを見ると危険性が高い状況ですし、日本でもより詳しく状況を確認できるようになること含めて、今後の状況と報道の進展に期待したいです。

2011年5月5日木曜日

「拡散の試算図2千枚、公表は2枚 放射性物質で安全委」の記事に関する推測と批判(?)

共同通信で以下のような記事が出ていたので、記事に対する批判等をツイートして、Togetter にまとめました。


1. 元記事の引用

拡散の試算図2千枚、公表は2枚 放射性物質で安全委

SPEEDIの試算結果について記者会見する原子力安全委員会の班目春樹委員長=3月23日、内閣府

放射性物質の拡散を予測する国の「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」で、福島第 1原発事故後に2千枚以上の拡散試算図が作成されていたことが18日、分かった。SPEEDIは原発事故時の避難対策などに活用することになっているが、 所管する原子力安全委員会が公表したのはわずか2枚だけ。
開発、運用には約128億円の予算が投じられたが“本番”でほとんど使われず、国の情報発信の姿勢や防災計画の実効性が問われそうだ。
安全委がSPEEDIの拡散試算図を公表したのは、3月23日と4月11日。福島県飯舘村など原発の北西方向を中心に、屋内退避区域の30キロ圏の外側でも、外部被ばくの積算値が1ミリシーベルトを超えたなどとの内容だった。
これら2回の公表は、避難や屋内退避の区域が設定されたり、農産物から放射性物質が検出され出荷制限がなされた りした後だった。安全委は、予測に必要な原子炉の圧力や温度、放射性物質の放出量といった放出源情報を入手できず、事故前の想定通りに拡散予測はできな かったと強調していた。
しかし、文部科学省がSPEEDIの運用を委託する原子力安全技術センター(東京)によると、風向、降雨といっ た気象や放射性物質の放出量など、さまざまな仮定の条件に基づいた試算を繰り返している。ほかにも事故直後から1時間ごとに、その時点で放射性物質が1ベ クレル放出されたと仮定して3時間後の拡散を予測。これまでに作成した拡散試算図は、2千枚以上になるという。
安全委は、試算図を公表しない理由について「放射性物質の放出量データが乏しい。試算図は実際の拡散状況と異なり、誤解を招きかねない」と説明するが、未公表の試算図の中には、実際の拡散と近似した傾向を示すものもあった。
国の拡散予測としては、ほかに気象庁の予測があるが、同庁は「SPEEDIが国の正式な拡散予測」として、今月5日まで公表していなかった。
2011/04/18 19:43【共同通信】

----- 引用おわり -----


2. とぅぎゃり

ツイートのとぅぎゃりは以下です。

 「拡散の試算図2千枚、公表は2枚 放射性物質で安全委」の記事に関する推測と批判(?)
 http://togetter.com/li/125440


なお実際の原子力安全委員会の SPEEDI の計算結果の公開情報は以下にまとめられています。

 文部科学省 緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)による計算結果
 http://www.nsc.go.jp/mext_speedi/index.html



3. とぅぎゃりの考察を実際に公表された結果で検討してみると…。

(2)や (3) については、上記とぅぎゃりで指摘している、「実際の放出を予測しておらず、特定の条件でどのように拡散するかを確認し他のシミュレーションを確認したり理解を深めるのに使ったのでは」という検討だと思います。これの類似情報は。(2) や (3) の内容を見ればわかるように、一般的にはあまり必要ないのではないでしょうか? 詳細に調べる人がアクセス出来ればいい情報に思います。

公表されている (1) や (4) についても、仮想事故等の検討が多いようですね(この部分はあまり役に立たないのでは)。

 原子力災害対策本部事務局(原子力安全・保安院)におけるSPEEDI計算図形一覧
 (平成23年3月11日〜16日)
 http://www.nisa.meti.go.jp/earthquake/speedi/erc/speedi_erc_index.html

試算図2千枚として他に公表して役に立ったものは、そんなにないのではと、現在公表されたデータからも思います(上記の (2)や (3) については誤解は生みそうですが、一般の人の避難等に役に立つのでしょうか?)。

2011年3月16日水曜日

共産党の「申し入れ」が外れているのに、原発の事故を「人災」と騒ぐ人たち

0. 「申し入れ」を見て騒ぐ人たち

今回の地震で起こった福島の原発の事故について、この共産党の申し入れ(「福島原発10基の耐震安全性の総点検等を求める申し入れ」)を聞かなかったから起った、東京電力の人たちの人災だと騒いでいる人たちがいます(例:東浩紀氏の語る、『内ゲバばっかり』の『外圧に強い』国 日本 中程など。検索すればたくさん出ます)。
はてブでも、この申し入れの 4 番が特に的確だとたくさん書かれ、東電が2007年に既に指摘されていた事を無視していたために状況が悪くなった、というようなコメントが書かれていますはてなブックマーク-福島原発10基の耐震安全性の総点検等を求める申し入れ)。

でも読んでみると分かりますが、この申し入れでの指摘、むしろ外していると思うのですが?


1. 今回の福島の原発の事故原因

今回の事故の原因は、あまり細かく書く必要はないと思いますが、原子炉が制御棒挿入により停止した後、原子炉内から熱を取り除かなければいけませんが、これがうまくできなかったことで発生しました。
具体的にみてみると、地震発生後すぐは、ちゃんと冷却する系統が動いていました。しかし、津波によって電源が失われ、冷却できなくなりそれぞれの原子炉の熱の制御が困難になりました。つまり津波による電源への影響が問題だった訳です(専門でないので用語等適当です)。

実際に時間経過を詳しく見てみますと以下のようになります。
3月11日 14時46分頃 地震発生

原子炉の冷却に重要な外部電源が停止しても、非常用ディーゼル発電機はうまく起動し、注水することで冷却ができていました。しかし、津波がきて (15:34)、非常用ディーゼル発電機が故障停止し(15:41)、オイルタンクが津波により流出(15:45)して電源が不足するようになりました。つまり、どのような形かは不明ですが津波の到達が原因で非常用ディーゼル発電機等の電源が喪失し、注水不能(冷却不能)になったことが強く推測されます。この経過を見る限り、注水不能の原因は寄せる津波が原因で、引き波ではないでしょう。
(なお、時刻が分からない外部電源の故障は、もしかしたら津波より前かもしれません。ただ、その後非常用ディーゼル発電機が自動起動しているので、可能性は低いと思います)


2. 「申し入れ」で示されている危惧

一方、共産党の申し入れでも今回うまく機能しなかった冷却系の問題を指摘しています。(今回は一般論の 1, 3, 5 と、断層の話 2 はおいておいて、はてブでも特に焦点となっている 4 について話します。断層の話は大事かもしれませんね。よく分からないですが)

福島原発はチリ級津波が発生した際には機器冷却海水の取水が出来なくなることが、すでに明らかになっている。これは原子炉が停止されても炉心に蓄積された 核分裂生成物質による崩壊熱を除去する必要があり、この機器冷却系が働かなければ、最悪の場合、冷却材喪失による苛酷事故に至る危険がある。そのため私た ちは、その対策を講じるように求めてきたが、東電はこれを拒否してきた。
柏崎刈羽原発での深刻な事態から真摯に教訓を引き出し、津波による引き潮時の冷却水取水問題に抜本的対策をとるよう強く求める。

この文では確かに冷却系の問題を書いていますが、冷却系自体の問題を指摘するのは当たり前というか、ちゃんと制御棒が入れば、あとは冷却するだけなので、誰でも指摘刷る部分かなと思います。(素人目に見ても、地震時の問題は、炉が破壊されないか、制御棒が入るか、冷却できるかが、などになるかな?と思います。)
そしてより細かく見ていくと、冒頭部分で「チリ級津波が発生した際には機器冷却海水の取水が出来なくなることが」と書かれています。そして、一番の結論としては最後に、「津波による引き潮時の冷却水取水問題に抜本的対策をとるよう強く求める」と書かれています。
予備知識として、チリ地震による津波について簡単に調べてもらうといいのですが、あの津波の際には、引き潮が発生したのですよね。共産党さんのサイトの記述では(チリ地震が警鐘 原発冷却水確保できぬ恐れ-引き波の脅威)「1960年のチリ地震津波では6メートルほど海面が下がり、町史には海底が見えたと記録されている。」とのことです。一方、原発は海水を組み上げて冷やす系があります。
つまり、この項目 4 では、地震の津波による引き潮によって組み上げができなくなり、冷却できなくなるのではないかと指摘しているのですね。 
今回発生したことと真逆ではないですか?今回、津波で破壊されるまでは、冷却系は機能していました。このような引き潮による影響は、少なくとも今回は起こらず(むしろ起こりにくい?)、寄せてくる津波による影響が大きいという結果でした
今回の地震と事故は、申し入れの指摘が的から外れていることを示した、良い例証になっていると考えられます。
なお、共産党さんが引き潮が問題になるという考え方をしていたことは、こちらのページ(チリ地震が警鐘 原発冷却水確保できぬ恐れ)で確認できます(去年 3 月ですが)。


3. なぜ、この的外れの指摘を鋭いと感じてしまうのか?

一方、この指摘を鋭いと感じている方が結構いらっしゃいます。
なぜ、逆の指摘であるのに鋭いと感じてしまうのでしょうか?

ここからは私の勝手な考察ですが、(1) この申し入れでは、原因はともかく結果である冷却ができなくて発生した事象自体が正しく記述されているから(2) 報道で"津波により電源が故障"したことが原因であるとはあまり強く報道されていないから(現在は冷却自体に注目が集まっているので)ということがあるかなと思います。
(1) については共産党さんちゃんと勉強していてすごいと思いましたが、この事故の形式については、NHKの解説員の方が地震後に丁寧に解説できるように、既に普通に専門家に予想され対策され、ある程度周知されていることなので、特段すごいわけでもないでしょう。問題なのは冷却系という大きなくくりでなく、課題となる事柄です(自動車の整備不良で考えてみても、具体的な整備不良の場所を指摘しなければ意味がないです。具体的箇所を間違えていたらなお困ったことになります)。
もしくは受け手側として (3) この申し入れの文章を読んで、引き潮について書かれていることを読み取ることができなかった場合や、(4) そもそも冷却系がなんでうまく働かなかったか、まで考えが及んでおらず今回の件から教訓を全く得られていなかった場合 なども要因として考えられるかもしれません。こういう場合に特にわたしから言うことはありません。


もし誤解されていた方がいたら、上の要因のうちどれだったか教えていただけると嬉しいです^^


4.最後に

この申し入れを実施していれば、今回の地震による事故の悪化は防げたでしょうか?
引き潮による取得困難を防ぐために、引き潮の時間に必要な水量をプールに貯めておくなど対策をとれば、津波で電源は損傷しなかったでしょうか?
水を使わない冷却方法に、液化ナトリウムやCO2ガスを用いた方法があるようですが、これをもっと推し進めて、電源を使わなくても手軽にいっぱつで冷却できる理想的な装置を開発すれば、あるいは防げたかもしれません。ですが現実的にはむりですよね。
電源がなくても冷却できる/電源を確実に確保できることはあくまで理想であり、現実的には電源の数を増やしなるべく確実に近づけるか、冷却系を増やすことで実装しているのだと思います。事故防止のどの分野でも同じ感じではないでしょうか。

根本原因を的確に判断できない人には、教訓をえることはできないでしょう。
あなたは、共産党の申し入れで書かれているように、今回の地震と原発の状況から「地震から教訓として何を取り入れて対応」しますか?

PS.
はてブでも何人かの方が、同じ指摘をしていますね。でも少なすぎです…。ほんとにどうしてこうなったの…。



5. この記事の意義(2011.03.19 追記)

いくつかご意見ご指摘いただいているので(Ceron.jp すんか (sunka) の科学系: 共産党の「申し入れ」が外れているのに、原発の事故を「人災」と騒ぐ人たち )、それに対するコメントと、特に強調していなかったこの記事の意義について少し。


[ご指摘 1, 2]
  • 指摘の間違いを証明したところで、原発の正しさの証明にはならない。
  • あのページとそのブクマだけで判断したら仰るとおりかもしれんね。今そこに意味があるのかはわからんけど。
記事の趣旨として、原発の是非については語ろうとは思っていないです。この「申し入れ」をもって東京電力が招いた人災というのはおかしいということと、描写されている現象が同じ事で思考停止し、本当の原因を考えないことは問題だと指摘したかったために、書きました
この記事により、
  1. 少なくとも申し入れでは的確な指摘は行えておらず、東電が「申し入れ」を受け入れなかったための人災ではないことを示し、がんばっている東電の方の手をなるべく煩わせなくていいように出来る。
  2. この生地の指摘により原因をより深く考えていただき、安全性の向上に資することが出来る。
と考えています。この 2 点は、現状では重要なことかと思います。
また、この東電の人災という意見に反論することが「意味がない」と言うのなら、反論される意見を言った人たちにも、「その意見は意味がない」と言うべきかもしれません。そんなことしてる場合なの?って。


[ご指摘 3]
  • 吉井英勝議員(京都大学工学部原子工学科)の話=「津波でも、海面が上がると冷却ポンプが水没する危険があり、海面が下がると冷却水喪失の恐れがある。」 → 海面の上昇(津波)と下降(引き潮)の危険性を指摘した
予想質問です。
吉井英勝議員は、水位があがって水没する可能性を多少なりとも考えていることは分かりますが、共産党の「引き潮」の可能性をプッシュする方向性をそちらのほうに変えませんでした。つまり、真意は分かりませんが、ある程度想定はしていても、「引き潮」のほうが可能性が高いと考えていたのではと思います
また、当該「申し入れ」に寄せる津波については書かれていません。これも共産党の当時の視点を示す傍証となると思います。そして、「申し入れ」書かれていないのでは、具体的かつ重要な指摘として、東京電力には伝わらないのではないでしょうか?
これらを勘案する限り、正直「申し入れ」自体も指摘を外しており、吉井英勝議員も寄せてくる方の津波をそこまで重要と考えていたようには思えません(思っていたら、申し入れ等で指摘すべきです)。10 メートルを超える大津波が来る場合について、吉井英勝議員が検討できていればよかったかと思いますが…。実際起ってみないと質問者含め誰もが本当に起こるんだろうか?って思っちゃうレベルの前提(津波)なのが難点です…。


[ご指摘 4] (2011.04.07 追記)
  • Carnot1824 外れていると言うためには、「引き潮には耐えた」ことを証明しなければならない。/↓id:sunka は事故の原因を吉井議員になすりつけようとするクズ。
仮に引き潮が影響を与えていたとすると、津波がくる前に取水ができなくなりトラブルが発生し冷却に影響が出ていると考えられますが、記事に書いたように「津波で破壊されるまでは、冷却系は機能して」いたと考えられますし、津波で電源がなくなった後もバッテリーで動いている間は冷却に致命的な影響は見られませんでした(逆にバッテリーがなくなってから影響が見られた)。 多少取水しにくくなったなど(万が一)あったかもしれませんが、 共産党の「申し入れ」に見られるような、「機器冷却海水の取水が出来なくなること」が原因で冷却できなくなった訳でないことは明らかでしょう。
苦しい批判ですね^^。
ツイートでも書いていたりするのですが、個人的には何か影響があったことを示唆するものがあったら純粋に面白そうなので教えていただきたいレベルです。
責任をなすりつけると言われても困りますね。記事の意図で書いてあるように、「申し入れ」(の特に 4 番)があたっているとして過剰に持ち上げるのはおかしいと主張したいだけですので。評価されるべきところを評価されず、間違っているところを褒められるのは嬉しくないと思いますよ、普通の感覚なら。
また、コメント欄でも書いていますが、引き波などに拘泥せず、バックアップ電源と寄せる波にこだわり、何らかの対策をとれば今の状況よりはよかったかも、と遠い目で言っているだけです (-ω-*)。現実的には系統を増やしたり外部からの電源を増やしても、あの津波では厳しかったのでは、とも思いますが…。



6. 謝辞(2011.03.19 追記)
最後に、記事の確認や充実に貴重な意見を頂いた @_taka51 さんに感謝いたします。ご私的により充実した記事になりました。
また、ご意見、RT 頂きました @nasunet さんや、ご記事をご紹介いただいた皆様にも感謝いたします。
TL のみなさまも、ありがとうです。

2011年2月6日日曜日

「ネット上の著作権保護強化は必要か−アニメ動画配信を事例として」を読んでみる

いろいろなところを見て、これは書かないといけないと思ったので。

1. はじめに
査読ありの論文ではないですが「ネット上の著作権保護強化は必要か−アニメ動画配信を事例として」というディスカッション・ペーパーが公開されています(http://www.rieti.go.jp/jp/publications/nts/11j010.html )。
内容としては、公表されている DVD 売上、DVD レンタル、youtube での再生数と削除までの日数、winny での流通量(指標)をアニメ作品ごとに調べ、その他の作品に関わるパラメータを含め解析し、売上等に影響を与える因子を調べるという研究です。
使っているデータや、想定したパラメータ、解析手法については、おおよそいいのではないかな?と、(別の専門の視点からですが)思ったのですが結果に対する考察に相当する部分が(強い言葉ですが…)ずさんであるように思ったので、指摘しておきたいと思うのです。


2. 疑問、問題と思った点

上述のように方法はいいのですが、全体的に交絡が存在する可能性が高いものがあるのに、その事を考慮せずに考察し、因果関係を述べていることです。
顕著な例をいくつか指摘します。(以下、ディスカッション・ペーパー pdf に対する指摘)


<例 1>
「11のドラマ CD があるアニメは、それがないアニメより DVD 売上もレンタルも増えている。ドラマ CD はアニメの販売促進のために作られることがあり、この回帰によればそれは実際に効果をあげていることになる。実際、ドラマ CD がつくられているのは全作品の半分にのぼっており、この売上増加効果が自覚されているからと思われる。」 (p.18)

これ因果関係、いいのでしょうか?「(アニメオリジナル含め)原作が優秀で費用をかけているアニメだと、ドラマ CD を作っていることが多いし、売上も多いんんじゃないか」「売れるアニメではドラマ CD も売れるだろうし、ドラマ CD の販売も行うよね」とは考えられませんか? 販促に役立っているという考えもあると思いますが、上記のような考えはアニメの買い手側にも強くあると思いますし、実際そういう面も強いのではないでしょうか?


<例 2>
「25の声優ポイントは DVD 売上、YouTube 再生数、Winny ダウンロード数いずれもプラスになった。声優でアニメを選ぶ人はかなりのマニア層であり、そのようなマニア層はDVD 購入も YouTube 視聴も、Winny ファイルも全て利用する傾向にある。」 (p.18)

これも上記のドラマ CD と同じです。「お金と時間をかけてしっかり作っている出来のいいアニメでは、売れている声優を起用し、声優以外の部分の影響が大きく売れている可能性」「作品の出来が良かったから DVD が売れ、その作品をきっかけに声優がブレイクして評価が高くなった可能性」なども考えられそうです。
上記のような可能性から、評価の高い声優が多い傾向があるからといって、必ずしも声優でアニメを選んで買っているということは言えない気がします、この結果をもって、「声優でアニメを選ぶ人はかなりのマニア層」の傾向を語るのは極めて危険です(誇張ではなく、文字通り危険です)。


<例 3>
「まず、YouTube 再生数の影響を見ると、全ての符合がプラスであり、特に DVD 売上を被説明変数とする式[4]では、YouTube の影響は統計的に有意である。すなわち YouTube で多く再生されると、DVD 売上が増える傾向が認められる。係数は 0.24 なので、YouTube 再生数が 1%増えると DVD 売上枚数は 0.24%増加する。レンタルに対しても有意ではないものの符号はプラスであり、YouTube 再生はレンタル回数を増やしこそすれ減らしているわけではない。全体として YouTube による再生は、作品の著作権者の収入を増やす傾向にある事になる。」

ここが一番問題になると思う。
前の 2 項と同様に、お金や時間をかけている、丁寧に作っているなどの条件を想定して語ってもいいけれど、単純に行ってしまえば「DVD 売上が高いようなおもしろいコンテンツは、 youtube でも再生される」っていうことは考えられないのか?可能性として否定されているのでしょうか?
このような各種数字に正の相関がみられているものは、コンテンツの面白さや質等の本質的なパラメータと相関し交絡している可能性があります。声優やドラマ CD、原作(漫画、ライトノベル等)、続編、ジャンル(女性向け、ファミリー向け)などの要素を入れて解析していますが、必ずしもすべての要素(とくに面白さ等)が検討されているわけではなく、交絡していないとは言えないのではと思います。(解析手法について細かく知らない、書いてない、解説していない部分もあるので、もしかしたら交絡していないと言えているのかもしれません…)


ただ、一方、測定値が負の相関が見られているものは、正確には言い切れないけれど、先程の面白さやお金や時間のかけ方などのパラメータで説明がしにくいので、交絡していないのかな、とも思えます。
例示すると、「一方、Winny によるファイル交換は、レンタル回数にマイナスの影響を与えている。係数 1.1 より、ファイル交換が1%増えるとレンタル回数が 1.1%減ることになり、レンタルで見る・あるいは入手する代わりにファイル交換で見る・入手する人がかなりいることになる。」
こちらなどは、負の相関のため、作品の面白さやその他の要因で説明できず、結果の考察としては、まあ言ってもいいかなと思えるレベルになっていると思います(もしかしたら何か説明できることが他にあるかもしれませんが…)。

以上、代表的な例を 3 つ(と例外の部分)をあげましたが、多くの考察に相当する文章に同様の傾向が見られ、測定した売上や再生回数等の値の相関に対する解釈、因果関係の検討に問題があるのではと思います。こういう因果関係について考察の項で書くのは、程度次第でいいですが、他の考えられる可能性を明記し、明確になったわけではないとはっきり書くべきなのではないかと思います。


3. 評価する点
一点、このような因果関係に関することでよかったことは、この論文の主論である DVD 売上と youtube で削除されるまでの期間の相関については、交絡が起こりにくく、ある程度の因果関係は言えるかもしれない、ということです。

「YouTube でのファイル寿命が DVD 売上とレンタル回数に及ぼす影響を見ると、テレビ放映後ではプラスであり、DVD 売上については有意である。すなわちテレビ放映後については YouTube ファイルの削除を行わず、放置しておいた方が DVD 売上が増える。テレビ放映後に YouTube で作品を知り、ファンになって DVD を買いに行くという宣伝効果が働いていると解釈できる。」 (p.19)

上記の「YouTube でのファイル寿命」は、削除されるまでの期間ですが、これはコンテンツの面白さ等には関係がなさそうな要素です。注目度の高い、面白い作品の方が削除されやすいということはあるかもしれませんが、結果はむしろ逆で、売れる作品ほど長期間消されないということになっています。
この主論になるポイントの部分だけは、(引用部分の最後の 1 文だけはそこまで言えるのかわかりませんが^^;)一応しっかりしているようで、興味深いと思います。ただ、同時に要旨等に数字で出している「YouTube視聴が1%増えるとDVD売り上げは0.25%増加する」などについては、前述のようにダメじゃないかなと思います。


4. まとめ

最後にまとめると。アニメをそこそこ見ている人からすると、データのとり方やパラメータについては、ある程度ちゃんと検討されているかなと思うだけに、解析後の考察部分については非常に残念です。(バンブーブレイド→バンブーブレードとか、"腐女子向けアニメ(「腐女子」とはオタク趣味のある女性をさす)" というおかしい記述とか、細かい点を除けば、ですが。腐女子については、p.14 ではある程度うまく書かれているのに、p.18 でどうしてこうなった…。オタク傾向のある場合でも腐女子以外に乙女系とかもあるよね…。)
仮に上述のすんかの指摘に勘違いがあって間違っていても、交絡がないということは、勘違いしないようにちゃんと真っ先に説明に入れておくべきことのはずです。
また、例にあげて説明した部分については、特に相関だとか統計についてわからなくても、アニメを見ていて状況を想定出来ればすぐに変じゃないかな?って思う部分だと思います。一般の人から見て学術や研究がばかにされないよう、論理の甘いところや穿って見られそうなところをケアするなど、頑張ってもらいたいと思います。そもそも、このような研究の場合、客観的な結果と考察を分けたほうがいい気がするんですよね…。
今回のペーパーでは目的の議論のもとにはなったと思います。ですが、長期の場合は youtube 等での公開によりやや売上が上がるかもしれないという主な点はおおよそ示されていますが、それ以外の部分はかなり言い過ぎが多く、引用する場合には細心の注意が必要と思います。


5. 蛇足。

上記の研究自体も面白いけれど、p.24 のアニメの放映作品数(2007年10月〜2008年 6月)の県別のグラフの方が面白いかもですw。



県ごとのアニメ放送格差が如実に…。
真ん中の徳島と新潟の間に差があるけれど、新潟より左でアニメを良く放送する系列局がひとつ多くなってたりするのかな? 興味深いですw。
ニコニコ動画による公式放送などで格差の意味は減っていくかもしれませんが、アニメ好きさんにはきっと参考になるでしょうw

2010年12月3日金曜日

「(3) 問題があるとした論拠に、関係者へのインタビューがあったが、それは事実か?」の議論、論点について

  全体の論点の項目立て( (3) とか)についてはこちらで確認ください。


◆ 「(3) 問題があるとした論拠に、関係者へのインタビューがあったが、それは事実か?」の一連の流れについて

  この点 (3) については、朝日新聞の「患者出血「なぜ知らせぬ」 ワクチン臨床試験 協力の病院、困惑」(http://www.asahi.com/health/clinical_study/101015_shakai.html)に、医科研の共同研究者の意見が掲載され、それに対して、まずオンコセラピー・サイエンス社が抗議文で反論し、関連研究者も反論した、という流れになっています。
  反論では、医科研が関係するネットワークのなかで朝日新聞に取材を受けた人を調査し、条件にあう人(大阪大学の方)を見つけたが、その人は記事に書かれたような内容のコメントはしていないと言っており、記事がおかしいのではないかというものでした (朝日新聞社に対する抗議文提出のお知らせ http://www.oncotherapy.co.jp/news/20101022_01.pdf)。

  • 朝日新聞の記事抜粋(http://www.asahi.com/health/clinical_study/101015_shakai.html)
がんペプチドワクチンの臨床試験で起きた「重篤な有害事象」(消化管出血)を他施設に伝えていなかった東京大学医科学研究所。被験者の安全を考え、別の施設の有害事象に関する情報提供を求めた他の大学病院の関係者は「なぜ知らせてくれなかったのか」といぶかった。
(略)
  • オンコセラピー・サイエンス社の抗議文より抜粋 (http://www.oncotherapy.co.jp/news/20101022_01.pdf)
第2 掲載記事にねつ造の疑いがあること
 また、掲載記事には「記者が今年7月、複数のがんを対象にペプチド臨床試験を行っているある大学病院の関係者」に取材した旨の記載がございます。
 東京大学医科学研究所で、改めて独自に調査を行い、「複数のがんを対象にペプチド臨床試験を行っている大学病院」に該当するすべての大学病院に問い合わせを行ったところ、今年の7月に記者から取材を受けたのは大阪大学のみということが判明した、と連絡がありました。ところが、大阪大学で取材を受けた関係者は掲載記事に記載されているような回答は全くしておらず、取材をした記者に対して電話で抗議したとのことでした。
 このように、掲載記事は十分な取材活動に基づいておらず誤りがあるうえ、ねつ造の可能性が極めて高いと思われます。

  現在、この議論は上記の反論後、朝日新聞が「確かな取材」というコメント (医科研記事、癌学会など抗議 朝日新聞「確かな取材」 http://www.asahi.com/science/update/1023/TKY201010230371.html) と「本件記事2の当該記述は、事実を端的に述べたものです。」 (朝日新聞社からの回答書 http://www.asahi.com/health/clinical_study/101119_kaitou.html) とのみしかしていないため、現状で最も焦点となる、
  • 朝日新聞が記事で述べたのは、この大阪大学の方のことでよいのか?
  • 上記の人であっているとすると、その人が本当に言ったのか言っていないのか?
の 2 点が明らかになっていません(この点は以下の、◆ 内部調査であることについて で触れています)。



◆ (3) に関する個人的な意見

  上段で書いたとおり、取材を受けた人が大阪大学の方でよいのか、ホントに記事に書かれたことを言ったのかが分からないため、以下は状況からの推測と判断になります。
  結論から言うと、朝日新聞は「朝日新聞社からの回答書」( http://www.asahi.com/health/clinical_study/101119_kaitou.html) にて、「事実を端的に述べたものです。」 と書いてありますが、論旨が変わらないよう適切に要約されていたか疑問に感じています。一般論として、インタビューを使用する際にインタビュー(取材)を受けた人の論旨が変わるように抜粋するのは、法律上は分かりませんが、ダメではないかと思います。
   まず、ここで議論の対象となっている出血に関して意見をする場合には、医薬品の作用とは無関係に、疾患の症状として消化管出血が起こる頻度が高いため、そこを言及しないと話し手と受け手の前提条件をあわせることが出来ず、出血の評価ができないという重要なポイントがあります。(医療従事者同士なら暗黙の前提で言わないことはありえます。)医薬品と無関係に出血が起こりうるのか、どの程度の頻度で起こりうるかが認識できなければ、そのうえに被せて発生する医薬品の有害事象は評価できません。大学ではどこの研究でもコントロールとの比較が大事だと言われますよね。意見をきかれた際に疾患症状である可能性を言及しない医師(もしくは医療従事者)がいたら、むしろそちらのほうが疑問に感じます。特に医療関係者以外にコメントをするなら、出血に関する知識がないことが想定されるので述べるのが普通ですし、そうしなければ患者さんでも報道の方でも適切に理解してもらえません。
  このような前提条件(他に出血例が既に周知報告されていたことなども含む)は報道でも、読む人に分かってもらうため当然重要になりますが、朝日新聞の当該記事では書かれていません。こういう観点で見ていくと出血に関する前提が書かれていなかったのは、(i) インタビューを受けた人が重要な点を言わないおかしな人だったか、(ii) 朝日新聞が都合のいい部分を切り抜き脚色したのかになるかと思いますが、両者の意見を見ていると後者 (ii) に近いのではないかと推測しています。朝日新聞が症状により出血が起こるという都合の悪い部分は、指摘されても適切に説明しないことなどから考えると、原因は (ii) なのかなと思うのです。取材を受けた人も「知っていれば、まあ多少よかったかもね」ぐらいは言ったりしたのかも知れませんが、それ以外の前提や一般的には副作用の可能性は低いということを省き、論旨が変わってしまったのではないかなと思っています。
  そもそも、この記事を掲載する前に、インタビューをした人に話したことと違っていないか、内容を確認してもらうべきなのでは、と思うのですけれどもね…(一般論として、できるだけ記事をかいたら取材対象者に見せて内容確認をしてほしいです。取材時の内容と全然違う、という意見は、ちらほらききます)。
   上記推測が正しいかは、結局朝日新聞が取材の内容をあかし、医科研およびインタビューを受けた人と議論をしなければわかりません。取材の際に言った言わないの話になるでしょう(後述)。追加情報がでれば今後変わっていきますが、個人的に (3) の議題は、朝日新聞 vs 医科研 は 2 : 8 で医科研優勢、朝日新聞の取材、というか編集が怪しいかな、と考えています(取材は確かだけどw、編集がイクナイかも)。
 (そもそも、医療関係で前提となる重要な条件を話さない人(いたとしたら)も理解できないし、その重要な点を報道しないでミスリードする報道機関も理解できないんですけどねぇ…)



◆ 内部調査であることについて

  この流れの中で、医科研と関連研究者が第三者に頼んで調査を行わず、内部で調査を行ったのはあまり良くなかったのでは?という意見があります。個人的には、多少の影響はありうるが、どちらの方法でも結果的に主論には影響を与えないのではないか?と思ってます。以下、少し説明です。

まず、内部調査と第三者調査で何か違いが出るかと考えてみると、
  • 対象者が正確に確定できない可能性
  • 対象者の意見が両方で変わってしまう可能性
  • 調査の信頼性の問題
があると思います。(主な部分です。他にもある、かもしれません。)
  1 つめの、対象者を誤る可能性については、内部調査でも第三者調査でもほとんど変わらないのでは?と思います。該当する人が複数人いたり、該当者がいない、という場合だったら異なるかもしれませんが、今回の場合、報道で出た情報で 1 人に特定されており、内部調査でも第三者調査でもこの点では差異がなかったのではと思います。それに、朝日新聞の担当者さんが取材記録を持っていると思われるので(なかったら別の論点で問題だけれど、それはないんじゃないかな)、仮に間違っていても指摘を受けることが出来ますし、医科研が隠し立てできる状況にもないですし。
  2 つめについては、多少影響があるかもしれません。第三者に調査され見つかって意見を言う場合と、内部で身内(といえるのかな?)に調査され意見を言うのでは、するコメントが違ってくる可能性はあります。ただ、どちらにしても、社会や研究者内、新聞社との関係や風当たりは同じであるため、コメントの内容は部分的には変わっても大きく変わらないのではないかと思います。特に今回のように議論が長期になるほど、方法の違いによる影響は低くなりそうです(周囲の意見を受けやすくなるため)。どちらの方法にしても、取材を受けた方と朝日新聞(の担当者さん)による、言った言わないの議論に帰着しちゃいます。この点についても朝日新聞が、少し情報を示して反論をしないと進まない話ではあります。
  3 つめについては、やはり朝日新聞(の担当者さん?)が 1、2 に反論をすれば、医科研の内部調査で、1 と 2 の主要論点について適切に調査をして結論を出しているのかもおおよそ分かってくるので、結果的にどちらの方法でも変わらないのではと思います。朝日新聞がこれ以上この論点について反論をしなかった場合は、争点になるかもしれませんが...。
  以上、3 つをみると争点は 1、2 に絞られていて、最終的に誰が取材を受けた?言った?言わない?という部分に帰着せざるを得ないため、内部調査でも第三者調査でもあまりかわらなかったのでは?と思います。また、第三者での調査でも朝日新聞の反論がなければ、2 つの争点の正しさが正確に分かりません。もちろん第三者で行えば、朝日新聞の再反論がなくても情報として信頼性が多少高くなり、よりよかったと思いますが、結局、現状と同じ膠着状況になったのではと思います。



◆ 今後の議論の展開について

  上記議論の通り、1、2 の点について朝日新聞(の担当者さん?)がもう少し情報を出して反論なり訂正なりをしてもらわないと、議論が進まないと思います。内部調査でも第三者調査でも、朝日新聞が意見を出さない限り調査の主要論点の正しさや事実が明らかにならないのが現状かなと思います。取材した方の情報を公開するときに発生する難しさはよく分かりますが^^;。ただ、現状、取材を受けたと目される人がそういう論旨では言っていないと述べていて、それに適切に反論していない以上、朝日新聞に疑いの目を向けざるを得ない状況だと思います。
  なお、今後、朝日新聞が意見を出さなかった場合、嫌な話ではありますが訴訟等で議論がなされる可能性があるかもしれません(オンコセラピー・サイエンス社が抗議文で上述の話を述べており、訴訟も検討しているため...。医科研、というか東大のほうも訴訟を検討しているようではあります)。できればそういう事態になるまえに、議論をして解決してほしいです。



◆ 感想

  それにしても取材に応じるって(取材する時も?)、リスク高いですね...。こういう言った、言っていないにまき込まれたらと思うと、かなり怖いです...。脇が甘いと大変なことになりますね。
 大阪大学の方は、今出ている情報ですと、何らかの場で証言する可能性もあるんでしょうか?訴訟で争点にあげるかによるのでしょうか? 自衛や正確性のために、取材を受けるときには(また取材をする際にも!?)、記録が必須な状況なのかもしれません。


(2010.12.03)

2010年11月15日月曜日

A.「治験」と「臨床試験」が違っていることの是非 の細論点

  この件については、いま医療界でも議論が進んでいる話ですし、専門でもない個人の話ですので不正確なところもあるかもしれません。とりあえず、朝日新聞が主張している部分について、まず整理し、細論点を考えたいと思います。特に「治験」と「臨床試験」の違いに関する議論が行われているのは、以下の記事です。
  • 記事 1.
    (医を創る)臨床研究、新薬承認に壁 大学などの研究者、データを申請に使えず https://aspara.asahi.com/blog/mediblog/entry/UK1giYMjBO
  • 記事 2. 【オピニオン】 臨床試験を考える 〜 福島雅典・臨床研究情報センター長インタビュー 〜 http://www.asahi.com/health/feature/opinion101110_interview.html
  • 記事 3. 【オピニオン】 臨床試験を考える 被験者保護する仕組み必要 http://www.asahi.com/health/feature/opinion101110_editor.html
上の主な記事をまとめると、とりあえず大きく 2 つ論点があると思います(もしかしたら、他の記事にいれたほうがいい論点があるかもしれません)。
  • A-1. 法律上で縛られていないために重篤な有害事象が問題視されない可能性がある
  • A-2. 「臨床試験」が「治験」と別であると、二度手間になったりして、「治験」および承認が遅れる
  なお、この裏というか「臨床試験」と「治験」が一緒になりにくい理由については、「治験」と一緒にすると「臨床試験」でやっていた試験の作業がかなり増えるということがあります。その分質は上がる、かもしれません。さらに加えると、新薬の「治験」と「臨床試験」に関する議論と、承認済みの薬の「臨床試験」とでは状況が違うので、A-1、A-2 それぞれにおいて異なった議論が必要でもあります。
  この 2 つのことだけ?分ける必要あるの?と思うかも知れませんが、これは結構種類が違います。1 つめは安全性の話で厚生労働省-PMDAっぽい話ですが、もう 1 つは経済産業省っぽい(というと微妙ですが)開発の話が多分に含まれています。この論点 2 つをごっちゃにして記事を書かれると本当に分かりにくいので真面目になんとかしてほしいです。分けて議論しないと、課題解決に結びつかないと思います...。
  そもそも医科研の件は、記事 3 の患者保護の安全性の話 (A-1) が主でしたが、その後に出た、記事 1 は A-2 の話をしていて、今回出た記事 2 は A-1 と A-2 の話がかなり混ざっています。この細論点は完全に可分でない部分もあるかもしれませんが、ある程度分けられる話だと思います。論点を整理して報道してほしいです。なお、整理するとわかりやすいですが、A-2 の例として医科研の話は適切なんでしょうか?
  もし私なら、(A-1) 安全性と (A-2) 新薬が世に出る効率の問題があり、「臨床試験」と「治験」を統一することを考えると、それぞれにつきこういう利点と不利益が存在する、実例として (A-1) には~~、(A-2) には~~のような事例が存在する、って話を進めると思います。センセーショナルにするのではなく、真摯に議論するならば、ですが。こういう形での議論でかつ、適切な実例を挙げていれば多くの「臨床試験」、「治験」関係者は喜んで議論に乗るのではないでしょうか?
  この 「A.「治験」と「臨床試験」が違っていることの是非」について、細論点への分解と、それに対する賛否、各種意見の把握と吟味、および細論点にあう適切な事例の選択ができなかったことは、問題提起や議論をする上での朝日新聞側の失点だと思います。
  以上、A の区分についてはこれぐらいで...。細かな A-1, A-2 と A 全体の議論はまた別に~(ってほんとにできるのかなぁ^^;)


(2010.12.03 微修正)